ヘアサロン『tricca atelier』でネイリストとして活躍する佐藤志保。“爪”という小さなキャンバスに様々な色や柄を描く緻密さと美しさはアート作品のよう。ネイルアートといえば派手で豪華なデザインが多い中、彼女が得意とするのはニュアンスネイル。淡く儚い水彩のような色彩感やあえてムラを出した質感など、他にない自由な雰囲気が魅力だ。

　以前はブライダル業界で衣装関係の仕事をしていた佐藤。もともとネイルは好きだったが、ネイリストとうまく意思疎通ができず、いつも何かが違うと感じていた。「資格や技術を身につけたいと思って、それなら私が理想とするネイルアートをできるようになろうって考えたんです」。20代最後の挑戦と一念発起しネイルスクールに行き始めたとき、客として通っていた『tricca atelier』のオーナーから店の一角でネイルを提供してみないかと提案を受ける。「こんなお店でネイルサロンをできたらいいのにな～って妄想してたんです。運命を感じてますますやる気になりました！」。レセプションやアシスタント業務をしながら閉店後はモデルやスタッフを相手に経験を重ね、約１年でネイリスト検定１級に合格。デザイン力と技術力の高さはもちろん、人懐っこい笑顔と大らかな人柄に魅せられて訪れるリピーターも少なくない。最近では、これまでの経験を活かしたブライダルネイルの依頼を受けることも増えている。

　現状に満足してしまうことが一番心配だという佐藤。全国のネイリストをSNSでフォローしてデザインをチェックしたり、ライブ配信を見て新たな技術を練習するなど、常に進化を続けている。大阪や東京のサロンに客として訪れ、憧れのネイリストから技やサービスを学ぶこともある。いつか自分だけのオリジナルデザインを生み出せる日を目指し奮闘中だ。

　「日常で疲れた時でもネイルを見るとハッピーになる！」というお客様の言葉にネイリストとしての喜びを心の底から実感したという佐藤。「自分がお客さんだった時の気持ちを絶対に忘れたくない。ネイルは体の一部で生活に寄り添うもの。だからこそ常に丁寧さを心がけたいし、相手のこだわりを汲み取りたいです」。その想いは指先を彩る小さなアート作品となり、今日も誰かの幸せに繋がっている。